大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和33(オ)157 判決

主 文

原判決を破棄する。

本件を福岡高等裁判所に差し戻す。

理 由

上告人の上告理由について。

原判決は挙示の証拠によりDはその夫であつた被上告人に内密で多額の債務を負

担し、債権者である上告人からその返済を急追され、被上告人を連帯保証人とする

ことを要求されたため、被上告人に事情を打ち明けて懇請したが、その容れるとこ

ろとならなかつたのでやむなく被上告人の印章を冒用して甲第一号証の借用証中保

証人関係部分を偽造したものであると認定していることは判文上明かである。

しかし、記録によつても明かなとおり、被上告人は第一審において甲第一号証の

借用証に押印するについては連帯保証を約束した趣意ではなく、これによつて妻D

をして支払をさせる責任をもつという意味を約束したに過ぎない旨陳述しており、

また右Dは第一審において証人として甲第一号証作成の際には被上告人も同席して

いた旨供述しておるのであるから、このような訴訟の経過に徴するときは他に特段

な事情の主張立証のない限りは、甲第一号証借用証の保証人関係部分が被上告人の

意思に反して作成されたものすなわち偽造にかかるものとはたやすく即断し得ない

ものと云わざるを得ない。況んや被上告人は本訴訟の過程において、甲第一号証の

被上告人名下の印影の成立を是認しているにおいておやである(このような場合に

は、右保証人関係部分の全部が真正に成立しているものと推定さるべきものである

ことは民訴三二六条の明定するところである。)

してみれば、原判決は叙上の点において審理不尽、理由不備の欠点あるものと云

うの外なく、所論は結局理由あるに帰し、原判決は破棄を免れないものと認める。

よつて、その余の論旨に対する判断を省略し、民訴四〇七条により、裁判官全員

- 1 -

の一致で、主文のとおり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 下 飯 坂 潤 夫

裁判官 高 木 常 七

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!